なぜ、ひらがなと挿し絵ばかりの、子ども向けにしか見えない本が起業家や経営者(もしくは多くの大人たち)にこそ必要なのか。
それは、物事の本質を見失わないためだ。
我々の周りは、多くの目に見えるものに溢れているし、ついついそういうものに囚われてしまう。
「お金」や「時間」は、その代表選手だ。
胸に手を当てて考えてみると、1日の中で、この2つを気にしないでいる時間はどれほどあるだろうか。
利益、給料、収入、所得、年収、月収、スケジュール、効率性、生産性、成長率、ROI、GDP、KPI、KGI、、、、
日々追いかけているこれらの数値や指標、目標は、一体なんのためにあるのだろうか。
それらを追いかけて得るものは?
本当に、それらは必要なのか?
そもそも、我々はなんのために生まれて、何を必要としているのだろう?
そんな、人生を生きる上で最も大事で、最も単純な、でも最も難しい(少なくとも我々大人にとっては)ことについて問いかけてくれるのが本作「星の王子さま」だ。
主人公の「王子さま」は、まだ子どもだ。
それゆえに、大人達が「なぜ、意味のないことばかりを気にして、よく分からない行動ばかりしているのか」がさっぱり分からない。
王子さまが質問しても、大人達は、
「いやいや、これにはこんな社会的意義がある仕事で」
とか
「僕のやっていることは崇高な事業で」
とか
あげく
「とにかく沢山お金が必要なんだ!」
と言われる始末で、王子さまはますます意味が分からなくなってしまう。
やっぱり、どう考えても必要とは思えないことを大人達はしているからだ。
では、普段の我々はどうだろうか。
例えば「お金」は?
確かにお金は全く無いと困ることもある。
食べ物がないと空腹だし、家がないと寒い。
でも、それだけならそんなに多くのお金は必要ない。
ではなぜ、みんな沢山のお金が欲しいのだろう? そのお金で、いったい何が「買える」だろうか。
ヨット?クルーザー?車?マイホーム?食べ物?服?それとも、旅行?
もちろん、本当に幸せのために必要な物もある。
カッコいい車は心をワクワクさせてくれるし、美味しい食べ物は幸福感を与えてくれる。
でも、他人の目を気にして、見栄や承認欲求、もしくは虚栄心のために煌びやかで高級なものを買ってはいないだろうか。時間を浪費してはいないだろうか。
それよりも、大切な家族や友達、そして自分のためにお金や時間を使ったほうが、少なくとも幸せだろう。
人間は、他人も自分も幸せにするために生まれてきたのだから、その本質を忘れてはいけない。
ぜひ、1時間でも時間をとって、本書を読んでみてほしい。
そして心の中に1人、自分の「王子さま」を見つけよう。
そうすれば、きっと「王子さま」は語りかけてきてくれる。
「君は、本当にそれで幸せなの?」と。
著者:サン=テグジュペリ さん(河野 万里子さん 訳)
出版社:新潮社
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